Fallen leaves
落ち葉に曇り空。黄色と灰色に染まった世界。
刺さるような空気は秋の終わりと冬の始まりを同時に告げているようで、マフラーを家に置いてきたことを少し後悔した。先ほど購入したレコードを片手に、並木道を歩く。
昨夜の雨が濡らした地面は滑りやすくなっていて、一歩一歩踏みしめて進んでいこうとすれば、注意は自然と落ち葉の方に向いた。
ふと、視界一面の黄色に既視感を抱いた。
――1stだ。
尊敬しているバンドの1stアルバム。そのジャケットだ。
気の向くまま写真に収める。乱雑な黄色。
カメラをポケットにしまい、腕時計に目をやる。想定より進んでいた針の位置に一瞬焦りを覚えたが、約束の時間にはまだ余裕があるはずだ。このあとは、友人と映画鑑賞を予定している。
せっかちな彼のことだから、用意したお菓子をもう食べはじめているかもしれない。それとも、一度没頭するとしばらく時間から切り離されたようになる彼だから、お菓子の存在もとっくに頭の中からどこかに飛んで行ってしまっているだろうか。
そんなことをぼんやりと考えつつ、歩みを速める。もちろん転ばないように気をつけながら。
上映予定の作品は、例のバンドのドキュメンタリー映画だ。リリースしたアルバムは、セルフタイトルのデビューアルバムを含めてわずか二枚。にもかかわらず、彼らの音楽はその後のロックバンドやアーティストに大きな影響を与えた。
奇しくもそんな彼らと同じ町に生まれ育った僕らが、彼らに憧れを抱くのは必然だった。幼なじみの自分達をバンドのボーカルとギターに重ね合わせ、いつかはロックンロールスターになると大きな夢を見たものだ。
並木道の突き当たりの角にある赤レンガの二階建て。アパートの奥の狭い一室。扉を開けると、そこにはいつも通り、ボロボロになったソファの上でギターを触る彼の姿があった。お菓子は手つかずだ。
扉を閉じる音に気付いたのか、夜勤明けの眠そうな目がこちらを向いた。
無言で、さっき撮った落ち葉の写真を彼の前に差し出す。
驚きで一瞬目を見開いた直後、口角がわずかに上がるのを僕は見逃さなかった。
彼は小さく頷きながらギターを置くと、ソファに座るよう僕に促した。
そのまま上映が始まる。
あとがき
ヨーロッパ留学中、イギリス・マンチェスターに行った際に撮った写真から。